「ねえ、あたしどうして、こんなとこ歩いてるのかしら」

「さあな、お前が行くって言いだしたんだろうが」

「わかったわ、ゾロのせいね。その方向音痴っぷりに付き合わされてんだわ、あたし」

「何言ってやがんだ、てめ… 付き合わされてんのは俺の方だろうがっ」



<蝉時雨>



“ねえ、ゾロ。暇なんでしょ、散歩いかない?”

日陰側の格納庫の壁に寄りかかる形で座っていたゾロに、がそう声をかけたのは一時間ほど前だった。
揺さぶりながらのその言葉に、閉じていた目を開けてゾロがこっちに振り向く。

“やなこった。この暑いのにめんどくせェ”

それだけ言うとまた、目を閉じて正面を向いた。

“やだ、何それ年寄りくさい。そうよ、船いても暑いんだもん。だからどっか涼しいトコでも行こうと思ったのに… 
 ま、いいや、ゾロがその気ならサンジ君と行くね。もういいよ、ゾロなんか”

そう言いながら、しゃがんでいたその場から立ち去ろうとしたの腕をゾロが掴む。
続けて立ち上がると、と反対側に立てかけてあった刀を腰に差す。

“行くんだろ。散歩”

そう言って、の頭を撫でた。

“…うん!”

それに、が満面の笑みで頷いて立ち上がる。

“あ、その前に…”

ラウンジに入っていった、その後をゾロが追う。

“コレ、持っていかないと。外暑いしね”

言いながら、が冷蔵庫から取り出したやかんの中身を、テーブルの上の水筒に入れ替える。

“おい、それクソコックが冷やしてたんじゃねェのか?”
“サンジ君? 違うよ、あたしよ。お茶、煎れて冷やしといたの。ゾロ起こすのに時間かかるかなー、と思って。
 サンジ君ならとっくにいないよ、昼ご飯の片付け済んだ後から。ナミのお供でショッピング、街行っちゃった”

はい、出かける前に水分補給。
水筒に移した残りを、コップに注いだが、にっこり笑ってゾロに差し出す。

―――やられた、か。
そうは思いつつも、ゾロはそのコップを受け取り、中身を飲み干す。
も同じように飲んで、二つのコップとやかんを洗って、出発した。



そして歩くこと小一時間、現在に至る。


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