今朝の集合は、まだ午前も早いうちだった。少なくとも彼女、にとっては。

昨日まで滞在の島に別れを告げ、出航したのは今日の午前中。
朝食を済ませてから港のメリー号に集合、そして出航準備、出航。
そんな感じで、バタバタした午前中も終わり、滞在中は別行動だったから久しぶりになる、
サンジが作ったランチを食べて。
美味しいランチでお腹一杯になったら、眠くなった。

……最も、ホントはその前から眠くて、ちょっとだるかったけれど。



      <日当り良好>



島に滞在して陸地で過ごした数日間の後の、海の上・船の上。
久々に思う航海は、キレイな青空にふわふわ浮かぶ雲、波穏やかでまずまず、申し分ない出だしだった。
バタバタしていた午前中に比べ、和やかな午後。
昼食の後は、皆思い思いの場所で、好きに過ごしているに違いない。
そして彼も。
そんな日の午後・昼下がりには、甲板の指定位置に船縁に寄りかかって眠るゾロ。
……と、今日は。
背中は船縁に、そして右肩と頭は… 彼に預けて、寄りかかって、も一緒に眠っていた。


しばらくそうやって二人で眠っていた、ゾロとだけれど。
ゆら… ゆら… ゆらり……っ

―――!

ズルッ、と自分の左肩から何かが滑り落ちる感覚。
ゾロは咄嗟に目を開け、それを受け止めて支えた。

「あっぶねェな…」

その手の中には、の肩。
かくん、と項垂れた頭を慌てて支えれば… 未だ、目を閉じて眠っている


……さて、どうする?


@元のように、肩に寄りかからせる。
A起こして座らせる。
Bこのまま、そっと寝かせていわゆる膝枕。
Cもういいから、甲板に寝かせる。


……甲板に寝かせてほっぽったら後で正拳突きか踵落とし、よくて回し蹴りだな。
起こすのも何だし、肩に寄りかからせてまた落ちて来てもなぁ……

ゾロの手の中には、未だが。しかも、崩れて支えたときそのままだから……  
ひょっとしたらこれは、結構キツめな、中途半端な体勢。早く何とかしてやらないと。
しかし当の本人は、未だうとうとと夢の中。
しなやかな黒髪をゾロの腿に落とし、いつもゾロを映すダークブラウンの瞳は長い睫の瞼の奥に、
朱い口許は穏やかに、開き加減に。

「………」

ぐ、との肩を抱き、頭を支えたゾロの手が動いた。同時に身体も傾き……
何だか、そのとき。
ゾロの目にはそのとき、とても魅惑的に見えたというの唇。
その唇を、自身のそれで塞ぎ…… じゃなくて。
イヤ、ちゃっかりしっかり、ゾロはの唇を堪能したけれど、その後。
そっとの身体を寝かせ、自分も座ってた位置をずれて丁度いい位置に座りなおし、彼女の頭を大腿へ。

―――まぁ、たまにはこういうのも悪かねェかもな。

すぅすぅと、規則正しい寝息で眠るに膝枕。
穏やかに眠る彼女を見ながら、額にかかった髪をそっと梳いてやったり。
していたら、自然とゾロの表情も優しくなってきたように見えた。





「……ふーん。珍しいこともあるものねェ」

そうこうしていたら、右斜め上から響く声。

「普通逆じゃない? それ」
「……うるせェ。たまにはいいんだよ」

くすくす笑いながら、その体勢から動けないゾロから少し離れたところにしゃがむナミ。

「それにしてもよく寝てるわねぇ。
「ん、ああ」

そう言われて、ゾロもを見る。

「ま、仕方ないわね。午前中も、すっごい眠そうだったし。あくびしてたもの」
「……」
「聞いたらね、誰かさんが昨夜、眠らせてくれなかったんだって。明日から船戻ったらまた男部屋と女部屋で
別々になっちまうだろ、ってね。身体もだるいって言ってたわ」
「!」

それを聞いて、物凄く心当たりのあるゾロがばっ、と振り向くと

「ゆっくり寝かせてあげなさい。責任、ちゃんととりなさいよ」

立ち上がったナミはそう言って、にやり、と笑うと手を振って去っていった。

「ったく…」

去っていったナミから視線を戻すと、そこには

「何言いやがんだナミの奴。お前もお前だ、女同士で何の話してんだよ」

ゾロがそう言っての頬をツンツン突付くとうう〜ん、と眉根を寄せて。 
“ヤッ… ヤダぁ… も、ダメ……”  なんて。呻くようにが言うから。

……何となく、昨夜のを。自分の下で、今と同じセリフを言ったを、思い出してしまった。
が、その後に続いた名前が。

“サンジ君……”

―――!
「ちょっ、オイ、!てめェ、一体何の夢っ」
“も、食べれなー…い…… こんないっぱい…アップルパイ……”

それだけ言うと、は寝返りを打ち、仰向けだったのを左が下、つまりゾロの方を向いた横向きになった。

「………」

……ったく、コイツは……
「……危うく、起こすとこだったじゃねェかよ。おどかしやがって」

小さな声でそう呟き、寝返りを打った際にの首に絡まった髪を梳くゾロの顔は、先程広がった、
彼にしては珍しく緊迫した焦燥感はもう消えて。ふうっ、と息ついた顔。
ふっ、と全身の力を抜いたゾロは。
何だか今日はに振り回されっぱなしだ、と小さく笑い、その後もうひと寝入り、と目を閉じた。





「ああっ!」

そのゾロが再び目を開けたのは、そんな声のせい。
もうひと寝入り、と目を閉じてうとうとしたら聞こえた声だった。

「ゾロ、てめェマリモのくせに何つー羨ましいことを!」
「うるせェ、黙れアホコック!が起きるだろ!」

互いに睨みあってそう言葉を交わすと、慌ててサンジが手で口を押さえた。

「羨ましいならてめェもしてやりゃあいいだろ。それ置いて向こう行け」

ナミに本日のおやつをサーヴしてきたら、今日はゾロとは甲板で一緒にいるから二人の分、一緒に
持って行ってあげて、と言われたので持っていったらば。

「そっか、それもそうだな。悪かった、大声出して。後でちゃん起きたら、二人で食えよ」

そう言ってゾロの傍らに本日のおやつ二人分のトレイを置くと、“ナミすわーんv 眠くない? お昼寝しないかぁーいv”
とサンジはその場を後にした。


「……サンジ君、行った?」
「ああ。ったくあのアホコック、危うくが起きるトコ…… って、?」
「はい」

は答えると、目をぱっちり開けて起き上がった。

「なっ、てめェ… 寝てなかったのかよ!? 起きてやがったのか!? 寝たフリしてただけか!?」

詰め寄ってくるゾロに、まあまあ、と彼を宥める
そう。いくら眠っていたからとはいえ、寄りかかっていた体勢からグラリ、と思いきり自分の身体が
傾いたのに、程の格闘家が目を覚まさないはずがない。
案の定、そこで目は覚めた。が、倒れて身体打つ、と思った瞬間、ゾロが支えてくれて… 
その後、ちょっと迷ってたみたいだったけれど、何と膝枕で寝かせてくれたから。
そのまま、気持ちよくなって再びうとうとしてきて眠った、という。

「そしたら夢の中でだけど、サンジ君がアップルパイ焼いてくれて。美味しかったから美味しい、って
 言ったらまだまだあるよ、てどんどん焼いてくれて、あたしもたくさん食べたんだけどまだまだ
 焼いてくれて。部屋中アップルパイで溢れかえってもまだ焼いてくれるから、部屋から逃げたの」

そこで“ああっ!”って言うサンジの声で、目が覚めたのだ、とは言った。

「ありがとね、ゾロ。よく眠れた」

そう言ってはちゅ、と。
ゾロの頬にキスを贈る。

。よく眠れたってんなら、キスはそっちじゃねェだろ」
「あら。ホントは前払い、させられてるわよね、私?」

ヒトが寝てると思って、まああの時、キス以上のことしようとしたら、ねえ。どうなってるかはわかってるでしょうけど。

がそう言うと、うすらとぼけるようにゾロは視線をそらし。

「食うか? コックが置いてったヤツ」

傍らのトレイをとって、二人の間に置く。
汗をかいているグラスのアイスティーは変わりがなかったが、皿の方。
クリームとフルーツ、ミントの葉でデコレーションされたものと、飾りのミントの葉だけの、二つの皿。
甘いものも食べることは食べるけれど、大好き、て程でもないゾロ用と、ご多分に漏れずスィーツ大好き・
レディ向けの用は明らかで。
デコレーションしてある方をに渡すが、

「「あ」」

その皿に乗っていたもの、本日のおやつは、アップルパイ。
それを見て、二人同時にふきだしたけれど、アレは夢の中のことだから、と本日のおやつ、二人で美味しく戴いた。



ここは“偉大なる航路”の海の上、にもかかわらず、敵襲も、海軍も、天候の崩れも全くない、穏やかなある日の昼下がり。
日当り良好、昼寝に最適な、甲板でのお話。



                                                                      <fin.>


  おお、一日でゾロ夢書いたの、初めて(笑)!
  今日、よく晴れてぽかぽかしたGW初日でした。なので前々から温めてたこの話、書きたくなったり!
  ゾロです。誰が何と言おうと、ゾロに膝枕してもらいたかったの!そんでお昼寝したかったの!
  思いついたのは真冬で、いくら昼間でも天気よくても、外で寝たら風邪引くよ!ってな日でしたし、他に書かなきゃ
  ならないものもありましたし。
  でも今日は、この夢にうってつけの日。そんな日に書けて、幸せでっす!
  読んでくださいまして、ありがとうございました、さん。