「ねえ、あたしどうして、こんなとこ歩いてるのかしら」
「さあな、お前が行くって言いだしたんだろうが」
「わかったわ、ゾロのせいね。その方向音痴っぷりに付き合わされてんだわ、あたし」
「何言ってやがんだ、てめ… 付き合わされてんのは俺の方だろうがっ」
<蝉時雨・3(続きの続き)>
「………で? ここどこ?」
辺りを見回して、は呟く。
昼間、ゾロとつかの間の、二人きりのデートを楽しんだ遊歩道は。
ゴーイングメリー号が停泊している港からだと、一度町の中に入ってから、入り口となる公園があって、
そこを抜けて行くことになっている。
行くときは、割とすんなり行けたと思う。
まだ昼間だったし、人通りも多くて、迷ったら近くの人に道を聞けたし。
だが今は。
日はとっくに傾いて、大分暗くなってきた夕方。遊歩道を抜けたら、そこは入り口だった場所とは
違うところで、公園を抜けた頃にはもう、暗くなってきていて。
―――だって夕日がすごく綺麗だったんだもん!二人で見たいって思うじゃない!?
ゾロも付き合ってくれたし(v)
―――なんてやってたからこんな時間に!?
「……えっと…確かこの道、そこの十字路、右だったよね?」
「あ?真っ直ぐだろ?」
「えっ、違うよ。右、絶対右!」
「んなとこ曲がった覚えはねェ」
「ゾロはなくてもあたしはあるの!」
さっきからコレの繰り返し。暗くなった今も、こうして二人で、町中を行ったり来たり。
「じゃ、あそこに人いるから、聞いてみようよ」
そう言っては“すみません”とその人に港へ出る方向と道順を聞いた。
「ああ、港ならそこの十字路を左に曲がって、二つ目の角を右だな。あとは道なりに歩いていくといい」
その人はそう言うと、家路へと歩いていった。
「………」
「………」
はゾロと無言で顔を見合わせた。が、ふいに
「そこの十字路、左だって。さ、行きましょ、ゾロ」
そう言うと先に歩き出した。
「、お前… さっき絶対右だっつったよな?」
そのゾロの言葉に、がぴくっ、と反応する。
「な… 何よ、ゾロなんか真っ直ぐって言ったじゃない。あたしは曲がるってトコは、あってたもん!」
「それで反対方向行っちまったら世話ねェな」
「何ですってェ!?」
……どうやら、道に迷っているのは。ゾロのせいばかりでは、ないらしい……。
「〜〜〜っ、やっと帰り着いた〜」
そんなこんなで、二人がゴーイングメリー号へ帰りついたその時には。
もう辺りは真っ暗、ラウンジから洩れるオレンジ色の明かりが、やけに目にしみる。
「ただいま〜」
と、開けたラウンジには、テーブルの指定席にナミと、その傍にサンジ。
「!? ゾロ!? ドコ行ってたの、あんた達!」
「…と? ゾロが? 初めて来たこの町で? ちょっと遠出? しかも二人だけで?」
“サンジ君、お腹すいた〜”
“はいはい、ちゃんの分の夕飯、ちゃんととってあるからね。ゾロ、てめーのもついでに
とっといてやったから、ありがたく食え”
泣きつくに苦笑いのサンジが手早く二人分の食事を並べると、とゾロが揃って
“いただきます”と言って食べ始めた。
食べながらナミに、今まで何していたかを話したら。
「ゾロが極端な方向音痴なのは前々から知ってるけど、、あんたもゾロに負けず劣らずの
方向音痴でしょ!あんたとこのグランドラインで出会った時だって、武者修行中だって言ってたけど、
よくよく話聞いたらどっかの剣士と同じく、故郷飛び出して修行してたら帰れなくなったってことじゃない。
そんな二人が何で初めての町で二人だけで遠出してんのよ!」
「や、遠出っていうか散歩…」
「一緒でしょ、こんな時間まで。ったく、帰ってこれたからよかったものの……
いい、明日からログ溜まるまでの明後日まで、二人は船番。わかった?」
「えーっ」
「えーっ、じゃない、この迷走バカップルが!」
―――あーあ…ナミ機嫌悪いなあ、ヒトの過去のことまで持ち出して……
ま、仕方ないか、夕飯の後せっかくラウンジでサンジ君と二人きりのとこに、ドア開けて入っちゃった
からなぁ。サンジ君はサンジ君で、あたしにはいつもと同じだけどゾロのことすっごい睨んでるし。
あたしらもご飯食べたらさっさと出てくから、二人とも安心して?
でも…
「…ねえ、明日もナミ、サンジ君と出かけるの?」
そうが聞いたらナミは一瞬怯んだものの、
「当然じゃない」
ねえ、とナミが視線を送るその先で、煙草の煙と目をハート型にさせながら“当然です、どこまでも
お供しますよ、ナミすわんvvv”と答えるサンジが。
「……だったらみんな出かけちゃって、二人きりならいいかなあ」
ねえ? とが言ったら真向かいで食事しているゾロが無言で頷いて。
「なら他のみんなに明日出かけてもらえるよう頼んだら?」
「うん、そーする」
なんて言ってはにっこりと。
まあ、明日からも暑いみたいだけれど、それなりに楽しくは過ごせそう……?
ミーンミンミンミンミーン……
ゴーイングメリー号にいても、蝉の声は聞こえてくる。
「あっつーい……せめて水分とらなきゃやってらんないわよね」
がちゃ、と冷蔵庫を開けて、中の麦茶を出して。
―――ゾロの分も持っていってあげようかな。
二つのコップに麦茶を注ぐの背後に、忍び寄る影。
ミーンミーンミンミー……ッ
「よし」
注ぎ終わってが振り返った瞬間、蝉が鳴き止んだ瞬間。
「!」
ゴーイングメリー号のラウンジでは、船番を命じられたカップルが、キスを交わしたとか。
<fin.>
お…終わりましたあ〜。おつかれさまです。
初のゾロ夢、いかがでしたでしょうか。
8月某日、冷夏の合間のたまに暑い日に、うるさい蝉の声を聞きながら駅に急いでた私は突然、
「あ、蝉時雨の林道を、ゾロと手繋いで歩きたい」とふと思いました。
それから●日(恐ろしくて書けない)。2、3日に一度程度、ちまちまちまちま、書いてようやく今日、仕上げました。
「蝉時雨の林道をゾロと二人で手繋いで歩く」がどうしてこんな話になってしまったのかは、執筆に●日(恐ろしくて
書けない)もかかったせいでしょうか…
8月も下旬に入り、関東地方もようやく夏らしく暑くなり、蝉もさかんに鳴きだして、9月突入。
「よし、まだ大丈夫、まだ蝉は鳴いている」
と思いつつ、ちまちまちまちま書いて、今日に至る……
微妙に季節外れですみません。気がつきゃ肌寒く、蝉なんかとっくに鳴いてません。ゾロも偽者ですみません。
そして微妙にサンナミですみません。
……精進します。そのための参考に、ご意見やご感想、もらえると嬉しいです。