遠くから、その姿を見つめるだけでも。
違う誰かと話している、その声が聞こえるだけでも。

愛おしい。

そんな存在。



      <01.愛愛しい>



朝。
クルーの朝食の準備があるサンジは、この船では真っ先に目を覚ます。
その時、意識が覚醒するより先に無意識に捜すのは、そして目が覚めた視線の先に一番に
映るのは。

見つけた途端、フッとサンジの顔が、その日一日の最初の表情を作り出す。

…”

まだ眠っているの、愛らしい寝顔。
薄明かりの寝室の中、穏やかな、安心しきった彼女の寝顔。





昼間は、ルフィやウソップやチョッパーと笑顔で、甲板で遊んでいたり。
ナミと何事か、顔をつき合わして話していたかと思ったら二人一緒に噴出して笑っていたり。
甲板に出て煙草を吸っているサンジに気付いて、笑顔で彼の名前を呼び、駆け寄ってくるのも。
日の光の下で見る、そんな笑顔も愛くるしいけれど。
自分以外に向けているときはともかく、駆け寄って来たときなどは急いで煙草を海に放り投げ、
ぎゅうっと抱きしめたくなるけれど。

また、パラソルの下・本を読んでいるロビンの真向かいで、一緒に本を読んでいるときの
落ち着いた横顔も。
読んだ本に書かれている内容について、ロビンと討論しているときの真剣な顔も。
一息ついたのを見計らって紅茶を出すと、 “ありがとう、サンジ” とふっと緩まる顔―――
ロビンにも一緒に茶を出すが、そして一通りの給仕と美辞は並べるが、正直、サンジの視線は
の方をちらちらと気にしている。
当のはそのとき、別に何にも言わないけれど、ちょっと面白くなさそうな顔をしている?
と思いたいのは、サンジの勝手?
いいや、そうではないかもね。

そんな顔もこんな顔も。
、貴女の嬉しそうな顔、微笑んだ顔、満開の笑みで笑いかけてくれる顔はもちろん、
落ち着いた顔、真剣な顔、ちょっと拗ねた顔すらも。
全てが愛しい。
その中でも特別なのが。
この寝顔だ。



他の表情は、貴女が起きているときで。
しかも俺達二人きりではなくて誰かが一緒にいるときの方が多くて。
俺以外の皆も、の笑顔や落ち着いた顔、真剣な顔も拗ねた顔も、見たことあるだろう
けれど。

この寝顔だけはな… と緩むサンジの頬。



え?  俺達が公認になって、二人だけの部屋を造って貰う前、は女部屋で寝てたから、
そのときにナミさんやロビンちゃんに見られてるって?
まあ、そりゃあそうかもしれねェ。
けどよ。理解ってるのかい? 、貴女は貴女自身の寝顔を。
こんなに安心しきって、穏やかで。
幸せそうに眠るレディは、他に見たことがねェ。 
ましてや、この愛らしい唇で。ときどき、ホンのときどきなんだけどよ?
“サンジ…”って。“サンジ…”って、俺の名前呟くんだぜ?
貴女は夢見心地で、目が覚めたら覚えてねェかもしれねェけど。

正直、に出逢う前にも。
何人ものレディと恋してきた俺は、こんな風に他のレディの寝顔を見てきたこともあったけれど。
けれど違う。正直、そんなレディたちが霞んじまう程…

。貴女は…。



この稼業、愛らしい、愛らしいじゃ乗り切れないことも理解っている。
“偉大なる航路”の航海は、いつだって危険と隣り合わせ。ましてや今は大航海時代、そこに
海賊旗を掲げて航海してるとあらば、なおさら。
いつだったかの敵襲のとき、、貴女を庇って俺が負傷したことがあったろ?
そのとき、貴女は助けたことへの礼を言ってくれた後に俺の怪我を心配し、悲しそうな顔をしてた。



“何、ちゃん、心配してくれんの?” 

そう、その時。ニヤニヤしながら、軽いノリでサンジはそう言った。そのときだった。

“……茶化さないで!”



……初めてだったよな?
、いつもにこやかな貴女が怒鳴った。本気で怒っていた。そして泣き出した。
本気で心配したのだと、治りにくい怪我だったら、後遺症の残る怪我だったら…。
そんな貴女と、その夜、じっくり話した。そして明くる日も、その明くる日も… 
チョッパーに俺の怪我の治り具合を報告しながら、看護の指示を請いながら、毎日看護
してくれた。
その甲斐あって、後遺症も全くなく、俺の怪我は治って。
……その頃には、俺達の仲も、今みたくなんたんだよな。


あの時の怒った顔も。泣き顔も。全部ひっくるめて… 
どんな表情のも、全て愛らしい。


そう感じるのは。俺にとって貴女自身が、とても愛らしくて、愛しいからなんだ。


この稼業、愛らしい愛らしいじゃ乗り切れないことも理解ってるが…
それが、俺とには、基本。
少なくとも、今この時間は。



“……”

朝。
クルーの朝食の準備があるサンジは、この船では真っ先に目を覚ます。
その時、意識が覚醒するより先に無意識に捜すのは、そして目が覚めた視線の先に一番に
映るのは。

…”

見つけた途端、フッとサンジの顔が、その日一日の最初の表情を作り出す。
しばらくその愛らしい寝顔を眺めて、彼女に対する様々な愛しい想いをかみしめてから。
彼女を起こさぬよう、そっとベッドを抜け出して、朝食の準備に向かう。

それがサンジの、毎朝の日課だった。


                                                   <FIN.>


         お題一つ目、「愛愛しい」
         まず最初に手をつけるのは、1問目から。葉月夕子作2004年夢小説書初めでございます。
         初めてはサンジ、と決めてました!(笑) いかがでしょう…
         お題モノ初挑戦の葉月サン、1問目は一応クリアなるか……?