“あん、だめ。こっち向かないで、サンジ。そのまま海見てて。煙草吸ったままでいいから”
<13.お願い>
昼食とその後片付けを終えておやつの支度まではまだちょっと間のある、そんな時間。
甲板に出て何となく船縁から海を眺めながら煙草を吸っていると、倉庫の扉が開いて
が出てきた。
もちろんすぐに気付いて、こっちに来ねェかな… なんて思いつつ。
わざと、正面を向いたままサンジはそ知らぬ顔で煙草を吸っていると……
“にこっ”
ほら、も甲板をさっと見回して、何かに気付いたように――それはもちろん、――
にこっと顔を綻ばせ、真っ直ぐに駆け寄ってくるのは、サンジの隣。
海を見ながら、煙草を吸うサンジの隣にやってきて、並んで立つ。
そしてじいっと、サンジを見つめる。
何も言わず、ただひたすら、じいっ、と。
でもその顔は、睨んでるわけでもなく。
じいっと見つめてくる顔は、どこか楽しそうで。嬉しそうで。
ときどき、ふふっv と笑い出しそうな。
船縁に肘を置いて、こっちを向いて。
は、そんな顔でサンジを見ている。
目の前の海は穏やかに、太陽の光を受けて、キラキラと輝いている。
その光のせいなのか、目を細め、眩しそうにサンジを見つめる。
「v …」
実は、から話しかけて貰えるのを待っていたサンジだけれど当のはこっちを
見ているだけ。
しかも、嬉しそうな楽しそうな。 目を細め、そんな顔で見つめてくるの愛らしさ。
視界の端にそんなを捉えて、サンジは。
そんな顔で見つめられたら、男なら誰だって……。
けれどそんなから、逆に話しかけてもらいたくて。
黙ってわざと自分も正面のキラキラ輝く海を眺めていたのだけれど……
もしかしたら、も俺が振り向いて、話しかけるのを待ってるのかもしれねェ。
一言も喋らないにとうとう痺れを切らしたのと、それに、とそう考えたサンジが彼女に
話しかけ、振り返ろうとしたそのとき。
「あん、だめ。こっち向かないで、サンジ。そのまま海見てて。煙草吸ったままでいいから」
途端に彼女は、むっとしてそう言った。
「はぁ? んだよそれ…」
「いいから。ね」
がそう言って、顔の前で手と手を合わせて言った。
「お願い」
「………何で?」
“お願い”ポーズまでされてそう言われるのなら、その願い、叶えてやってもいいけど。
「何ででもv ほら、サンジ、今日は晴れてて波も穏やかで海綺麗でしょ。
ここはグランドラインなんだから、こんな天気もそうそう持たないだろうし、今のうちに
綺麗な海眺めてても損はないはずよ。ほら」
だからこっちはいいから、正面向いて。
がにっこり笑いつつも、彼女なりに一生懸命言葉を並べて自分に正面を向いていて
ほしいらしい。
それはわかった。ので、サンジは正面を向いてやることにする。
「わかった。それじゃコレ吸い終わるまで、な。のお願い、聞くからさ… それが終わったら、
今度は俺のお願い、聞いてくれねェ?」
「ん……」
がこくん、と頷いたので、サンジは正面を向いて煙草を吸う。
その横顔を見つめながら。
……やっぱり、好きだなあ。サンジの横顔。
はゴキゲン。
そりゃ正面も素敵だけどね。この横顔・しかも左から、が、またイイのよv
鼻先から唇、顎にかけてのバランスが、すっごく綺麗なのよね。
ほんと、絶妙。
このラインがあるからこそ、正面もあんなに素敵なんだわ。
本当、眩しいくらい…… なのは、この蜂蜜色の髪のせいでもあるのかしら。
ホント、さらさらで綺麗で……今も日の光を受けて、眩しいくらいに輝いている。
私もこんな髪になりたくて、使ってるシャンプーとコンディショナーの銘柄聞いたら、じゃあちゃんも
次から、俺の一緒に使っていいよ、て言ってくれたっけ。
その髪に、隠れて見えない、頬や瞳。うーん、なんて言うんだろ? 見えないからこそ惹かれるの?
そこにあるのはわかってるんだけど。
あえて見えないって、いうのがね。
綺麗な金髪、絶妙なバランスの鼻先から顎、首にかけてのライン(髪に隠れて見えにくい、額から
鼻先にかけてのラインも絶対綺麗!)、髪に隠れて見えない、かと思ったら気まぐれに吹く風に
煽られてちらりと見えることもある、頬や瞳。
うん、やっぱり……
「…好きだなあ。サンジの横顔」
ぽつりと、呟くように聞こえた可愛らしい声に。
! それで、か…… の意図を理解したサンジが、くっ、と口角を上げる。
「サンキュ、。でも俺ァ」
すっかり、短くなった煙草を口からとり、懐から携帯灰皿を取り出してそこに捨てて。
「こうして正面から、クソ綺麗で可愛らしい、の顔見るほうが好きだけどな?」
その真っ直ぐに対象物を見つめる大きな瞳が。
魅惑的に輝く、桃色の唇が。
白磁のようになめらかで、綺麗な頬が。
サンジが振り返った途端、笑顔になる。
その顔を縁取る、長い豊かな黒髪さえも。
ただでさえ、俺を惹きつけてやまないのに、
「笑ってくれた時なんか本当に思うぜ、」
そう言ってを引き寄せてその腕に閉じ込めて。
「この世に、こんなにクソ可愛らしいものが存在するなんて、てな」
耳元でそう囁いて、の頬にキスを落とす。
「サンジ…」
「さて、今度はが、俺の“お願い”聞く番」
真っ赤になりながら、がサンジの腕の中で頷く。
「俺の気が済むまで、抱きしめさせて? このまんま、な」
そう言って、を抱きしめる腕を強くした。
……願わくば。
この腕を解いて、日常生活に戻っても。
彼女の、の…… 笑顔と存在を、いつまでも。
の傍で、俺が護っていけますように…… いや、護っていくから。
「……」
ありったけの想いを込めて、サンジは、自分が護るべき者の名を呼んだ。
<Fin.>
……うふふv
ONEPIECE307話扉絵により、左横顔萌え魂、萌え上がり。実は、正面より好きかも、です。
葉月も、ちゃんと同じく。