darling  darling ・・・・



人をこんなに愛せるなんて、知らなかった

貴方を見てるだけで、言葉にならない幸せを感じる


例え此の想いが届かなくても
貴方が他の誰かを愛してしまっても

きっと私は、貴方だけを・・・・
泣きながらでも愛してしまう



だってね



――――――サンジさん、貴方が私の全てだから




+-- darling  darling ・・・・ --+



が好んで座るテーブルの席は、料理するサンジの背中を眺められる場所。
サンジの背中へと真っ直ぐに、視線が通せる場所。


「はぁ・・・・」


テーブルに両手で頬杖をついたは、無意識に細い溜息を漏らした。
小さな吐息を聞き逃す訳もなく、直ぐにサンジが振り返る。
蒼眼に見つめられたは、口を抑えてビクリと身体を硬直させたが既に遅い。



「どうしたんだい?」


にっこりと微笑むサンジの眼が心から笑っていない事に気付き、は身が縮まる感覚を憶える。
ポーカーフェイスの料理人の感情を読み取る事を、はあまり得意としない。
勘が鈍い方ではないが、サンジに対する恋心がの観察眼を狂わせていた。


「あ、ちょっと寝不足で・・・欠伸が出ちゃった」


テーブルの下で白い手を握りながら、は切ない溜息を誤魔化す。


ちゃん。心配事があったら、ちゃんと言うんだぜ?」



コクンと頷いたを少し心配そうな眼で見つめて、サンジは視線を鍋に戻した。
はまた手を握り締めて、メリー号に乗った日に想いを馳せる。





小説家として世界を旅していたが初めて逢ったのは、ルフィだった。





海賊団旗を掲げる、可愛い羊頭のキャラヴェル船。
其のチグハグさに恐怖心も忘れ、は停泊するG・M号に吸い込まれる様に近づいた。
グランドラインに浮かぶ小ぶりな船からは、美味しそうな料理の香りと蜜柑の香りが流れてくる。
羊頭上にひょっこり現れた麦わら帽子の少年が、を見下ろしてニッと笑った。


「よぉ」


人懐っこい笑顔を見せた少年は、羊頭に両脚を絡ませてクルリとぶら下がる。


「こんにちは。とっても素敵な船ね。貴方は此の船のクルー?」

「ああ。俺はルフィ。海賊王になる男だ。俺達のメリー号は最高だぞ!乗ってみるか?」

「・・・海賊王・・・ワンピースを探してるの?」


の頭に "海賊船"  "海賊王" のフレーズが回ったが小説家として好奇心が震え出す。
こくりと頷いたへと向かって、縄梯子が放られた。は、ギュッと縄梯子を握り締める。
ドキドキと胸を高鳴らせ船縁まで昇ってゆくと、スッと目の前に手が差し出された。


「其の美しい手を、俺に預けていただけませんか?レディ」


頭上から聞こえた声に、は手元から視線を上げた。
眩しい太陽を背負った金髪の男が、咥えタバコでにっこりと笑っている。
は其の優しい微笑みに、礼も忘れてボンヤリとサンジを見上げた。
止まっているに苦笑したサンジが、今度は両手を差し出す。

優しく持ち上げられてフワリと浮いたの身体は、甲板へと音も無く降ろされた。
の手を改めて取ったサンジが、恭しく甲板へ跪く。


「プリンセス。俺はサンジ。海の一流料理人です。素敵な貴女のお名前は?」

「ぁ・・・ です」


真っ紅になったの手の甲に、サンジの唇が落ちた。
同時にゴンッと音が聞こえ、オレンジの髪を揺らした美女が、握った拳は其のままに微笑む。
サンジはタンコブをハート型に膨らませて、甲板に突っ伏していた。


「いらっしゃい。此の島、ログが溜まるのに一ヶ月も掛かるけど、物価も安いし良い島ね。
 丁度退屈してたトコなの。一緒に夕食でもどう?・・・海賊でも良ければ、だけど」


微笑んだは、美女の誘いを有り難く受ける事にした。
サンジが煙を流しながらラウンジへと歩いてゆくのを、何となく眼で追う


。お前は、いつも何やってんだ?」

「・・・え?・・あ、小説家よ。其の為に世界中の不思議な事や場所、何でも知りたいの」

「世界中か〜。海は広いからなぁ〜」


嬉しそうに言ったルフィに連れられ、は昼寝中の剣士の横を通りラウンジへと向かった。
ラウンジへの階段が優しくを迎える。 一歩一歩上がる度に。
は以前から知ってる様な、懐かしさに似た不思議な感覚に包まれた。


「こんにちは。お邪魔します・・・」


が開けた扉の奥には、読書中の美女と半身を隠したトナカイが顔を向ける。
ナミに案内されて、はテーブルについた。


「・・・航海士さん、ゲストは此の方?」

「そうよ、ロビン。小説家の。世界中を旅してるらしいわよ。話が合うんじゃない?」


一息ついたの視線の先に、フライパンを振っているサンジが居た。


猫背の背中からも、楽しそうに料理を作る様子が見て取れる。
咥えタバコから流れる紫煙は天井へと昇り、料理の湯気と絡まってゆく。


がボンヤリと見つめていると、アイスティーをトレーに乗せたサンジが傍に歩み寄る。
サンジは優しく笑って、氷がカランと音を立てたグラスをテーブルに置いた。
料理の熱気に当てられたサンジの額から、の足元にポタリと汗が落ちる。


「ありがとう、サンジさん・・・」

「どういたしまして。ちゃんにお礼を言われるなんて、至福を感じちまうね」


スッと胸に手を当てたサンジの金糸の先に、キラリと汗が光る。
炊事場がかなりの高温になっている事は、其の汗量から容易く推測出来た。
サンジは煙を揺らしながら、グラグラと滾る大鍋や激しい焼き音を立てるフライパンの元に戻る。


「麗しいレディに囲まれた俺の愛の炎が、火力を上げてやがんな〜」


軽口とは裏腹に、サンジの料理に対する誠実な愛情を垣間見た
額を拭い振り返ったサンジは、にっこりとに微笑みかけた。


「ちょっと待っててね、ちゃん。可愛い顔が蕩けちまう位のクソ美味ェ料理を作るからね。
 俺に素敵な出逢いをくれた、ちゃんの為に・・・」


其の時、は決して上がれない恋の海に突き落とされた事に気付いた。




突然の訪問者を囲んで始まった宴は、夜が更けても勢いを増すばかりだった。
鼻割り箸で踊るお子様組。其れを見て涙を流して笑う航海士。の小説を読みふける考古学者。
ラム酒を催促する剣士。追加の肉を焼き続ける料理人。そして、楽しそうな


すっかりクルーに溶け込んだを見て、胡座で座るルフィが嬉しそうに笑った。


、海賊は楽しいだろ!世界は広ェし、俺達の知らねェ事も宝も山程ある!!
 お前も仲間になれ!すっ・・げェ〜〜〜〜〜〜冒険の旅を一緒にやろう!!!!」

「・・・私が海賊に・・・・」


あっはっは、と暢気に笑っているルフィを見つめたは、クルー達を見回した。
少し心配そうな顔をしたナミが、を眺める。


「役に立たなかったら、降ろして下さい。私、皆の足を引っ張るだけじゃ嫌ですから。其れが条件です」


力を秘めたの瞳に反論を唱える者は、誰も居なかった。
食事会から新たな仲間を歓迎する事に変わった宴は、月が薄くかげるまで盛大に繰り広げられた。







          "役に立たなかったら、降ろして下さい" 


其れから半年の間、は自らに掛けた圧力を何度も心の中で繰り返した。
時には、戦闘の力になれなくて泣いた事もあった。
そんな時にはいつも、サンジの背中をこっそり眺めて自らを励ました。




          此の背中に恥じない様に。
          いつでも胸を張って、サンジさんを好きでいられる様に。



洗い物をしているサンジの後で、はゆっくりと空気を吸い込んだ。


「・・・サンジさん」

「何だい、ちゃん」


細かい飛沫を皿から飛ばし、サンジは柔らかい視線をに向けた。


「私、もっと皆の役に立ちたいの。かと言って戦闘は難しいから・・・料理のお手伝いとか。
 始めは・・足手まといになるだろうけど、必ずサンジさんの力になれるようにするから・・・だから・・」


キュッとカランが捻られ、水道が止まる。ピチョンと水滴がシンクに垂れる音がした。
サンジは濡れた手を丁寧にタオルで拭いて、タバコの火を揉み消す。


「パティシエの勉強でもするかい?ちゃん」


「ぁ・・・・は、はいっ」


にっこりと笑ったサンジは、上目で見上げるにドスコイパンダエプロンを見せた。
嬉しそうに頷いたにエプロンを掛け、サンジは頷く。


「サンジさん、今日のオヤツは何ですか?」

「ん〜?」


身を屈めて冷蔵庫を覗き込んだサンジは、ガラガラと音を立ててボウルに氷水を作る。
サンジは二重に重ねたボウルに生クリームをトロトロと注ぎいれ、に渡した。
キーンと冷えたボウルとステンレスの泡だて器が、の手に乗る。


「可愛いお姫様の生まれた日を盛大に飾る、特大ショコラケーキ」

「えッ!?あ・・・・どうして、誕生日の事・・・」


スッとキッチンに踵を返したサンジは、手際よくケーキ生地を混ぜ合わせる。
がいつも見つめて来た背中が、今日は一段と優しい空気を孕む。
窓辺から射し込む光はキラキラとサンジの金糸を輝かせる。
はサンジを初めて見つめた日を想い出し、瞳を細めた。


ちゃんの事をよ、全部知りてェと思ってんだ・・・本気で大事にしてェから。
 好きな料理も、行きたいデートコースも、包まれてェ香りも、照らされてェ太陽も見上げてェ月も。
 誕生日リサーチなんて、卵を割るより簡単だぜ?蜜柑のムースでバッチリだ」


振り返ったサンジは、冷たいボウルと泡だて器を抱えて固まるを見て苦笑した。


「生クリームはこうやって泡立てるんですよ?プリンセス」


サンジはの背後に回り込んで、細い両手を後から支えた。
重なった二人の手が、純白のクリームに空気を含ませながら泡立ててゆく。
背中にはサンジの体温を感じ、頬の横では金糸がサラサラと揺れている。
何処までも澄んだ蒼眼は、優しい光をたたえて静かに微笑む。

緊張を通り越し思考さえも止める至近距離。其れはの心臓に、強烈な負荷を与えた。
金糸が揺れる度に鼻先をくすぐるタバコの香は、どんな魔女も調合出来ない恋の媚薬に思える。


「・・・貴女はいつも輝いててよ。眩しくて、仕方ねェ。前向きで、好奇心旺盛で・・・。
 俺がいつもどんな気持ちで、背中に感じるちゃんの視線を持て余してたと思う?」

「う・・・」


真っ紅になったは、泡立てる手を止めて俯いた。
サンジはクッと笑い、手応えが重くなってきた生クリームの立ち具合を確認する。
テーブルの上に、ゴトリと乗せられる銀色のボウル。


「可愛い手が・・・冷えちまったな。大丈夫かい?」


サンジはの背中を包み込んだまま、そっと呟く。
の細い指と料理人の繊細な指が、ゆっくりと絡まる。
激しく打ち続ける心音は、今までで最高なのではと思いながらは黙って頷いた。


ちゃんが見つめてくれるからよ、俺の料理の腕も上がった気がすんだ。  
 愛する貴女から毎日見つめられんだぜ?もっともっと美味ェモン作ってやろうと思ってた。
 可愛いちゃんの笑顔が見れんのなら、俺はどんな努力も惜しまねェよ」

「・・・ホントに?・・・私、サンジさんを見つめ続けていいの?・・・」


掠れた声を出したの片手を上げ、サンジはゆっくりと甲に口付けを落とした。


「・・・俺は貴女に見つめられて居てェし、見つめて居てェ。ちゃん1名様限定だ」


嬉しさと安堵感で、ポロリとの瞳から透明の雫が落ちる。床にポタポタと小さな円が滲む。
サンジは震えているの両肩を引き寄せ、正面から抱きしめた。


「誕生日に貴女を抱きしめる事が出来た・・・・。ホラ、綺麗な瞳が涙で霞んでしまうぜ?」

「・・・・だって・・・ヒック・・・嬉しくって・・・・私・・・」


涙が止まらないの背中を見下ろし、サンジは両腕に力を込めた。


ちゃん。誕生日、おめでとう。最初のプレゼントは・・・魔法を伝授だ」

「魔法?」


サンジの手は濡れたの両頬に優しく当たり、そっと引き上げる。


ちゃんと俺が、いつまでも見詰め合っていけるように・・・。  
 其れから、貴女が小説家兼素敵なパティシエにもなれるように。ただし、魔力は一日だ。
 だからよ、毎日こうしてキスしよう・・・・たまに一日もたねェ時も・・・あるけどな・・・」


そっと閉じたの瞳、染まった頬にサンジのキスが与えられる。
サンジはの髪を梳かしながら、桃色の唇にもキスを落とした。


「おっと。呪文を言い忘れちまったぜ。ちゃん、お姫様にもう一度魔法を掛けてもいいかい?」


恥かしそうに睫毛を伏せたを優しく見つめて、サンジは静かに呪文を唱えた。





「 "愛してるよ" 」





The end  





シャオ 「うきゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!
      久しぶりに、自分で書いたノベルに赤面しますた (コラ)」  

サンジ 「おい、アホネコ。間違えてっぞ?」  

シャオ 「アァ?!何がだよ!!!!何処がだよ!!!!」  

サンジ 「魔力は、一分しか効果が無ェ!!」  

シャオ 「・・・・ さんのキュートな唇を腫らす気か?サンジ・・・・。
      はいッ、という訳で (謎) 夕ちゃんに捧げさせて頂きましたお誕生ノベルでした。
      G・M号クルーズに行かれるって事で、前半は急遽当人様だけにお送りしました (笑)
      夕ちゃん、チビシャオの伝言を大切に読んでくれて、ありがとうなのでした!!
      背景は夕ちゃんが撮影して送ってくれたG・M号のキッチンを使用してさせて頂きましたv」

サンジ 「夕ちゃぁぁあぁぁん!!遅れてごめんよおお!!素敵な一年を過ごしてね v 」




はい、というわけでいただきました。「バニラの花の砂糖漬け」シャオ様より誕生祝いノベル。
あぁ〜、もぅv 私、夢小説やっててよかった〜。 心からそう思える、素敵ノベルです。
あの日、チビシャオちゃんの伝言真に受けて、無礼承知で頼みに行って本当によかった〜。
本当にありがとう、シャオにゃ。大好きです。もうずっとついてきます。


「バニラの花の砂糖漬け」へは、リンク集よりどうぞ。
このように、ため息モノの素敵なサンジが、貴女を夢の世界に案内してくれます。ぜひv

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