「おーーーーーーい!

           丘の向こう側の景色、凄ェぞぉーーーー!」

         ゴムゴムのロケットで丘の上から戻ってきたルフィに急かされるように、

          クルー一同GM号の梯子を駆け下りて。

         「足元に気をつけてな?

          俺は丘へと続く心臓破りの坂を、の手を取って駆け上がる。

 

          まだ見ぬ景色よりも、綺麗な景色に胸を躍らせてるの瞳の方が。

          俺を惹き付けて止まねェ事は、胸の奥に隠して。

          その胸の鼓動が五月蝿ェ事は、駆け上がる坂の所為にして。

 

          「着いたぜ?プリンセス―――」

          丘のてっぺんで、息が上がっちまったの華奢な身体を支えてやると。

          チェリーみてェな唇から、甘いため息が洩れた。

   

          「ねぇ、サンジ見て!

           とっても、綺麗―――」

          すっかり息の上がっちまったが、まだ整わねェ呼吸の合間に。

          クソ可愛いソプラノで俺を促した視線の先には。

   

          見渡す限りのオフホワイトとエメラルドグリーンが、丘の向こうを埋め尽くしてて。

          俺達は歓声を上げながら、柔らかな絨毯へと転がり降りて行った。

 

 

  

                   『The Four-leaf Clover』

 

 

 

          「凄い!シロツメクサの群生地なのね」

          白い花に触れながら瞳を細めたロビンちゃんが呟くと、チョッパーが図鑑を広げて瞳を輝かせた。

          「シロツメクサの葉、クローバーっていうのは色んな効能があるんだって!

           俺、一杯摘んで薬つくろうっと。

            、手伝ってくれよ!」

          「うん、いいよ」

          は、行って来るねと俺に瞳だけで促すと。

          丘をゆるやかに駆け下りて、エメラルドの絨毯に座り込んだ。

 

          丘を埋め尽くす真っ白い小さな花が、風が吹くたびに揺れて。

          クローバーのカーペットに、甘い香りが漂う。

 

          「こりゃァ、気持ちよく昼寝出来そうだな」

          そう言うなり寝転んで、いびきをかき始めたクソ剣豪に苦笑してから。

          ナミさんが深呼吸をして気持ちよさそうに呟いた。

          「それにしても、このお花畑本当に甘い香りがするのね」

          白い花を丁寧に摘みながら、ナミさんと同じように甘い香りを身体の深くまで吸い込んで。

          ゆっくりと吐き出すと、煙草の灰で汚れちまってるはずの俺の肺も浄化されたような気がした。

          「あァ、クローバーってのァ上質なハチミツが採れる花ですからね。

           道理でミツバチが多いわけだ」

   

          言った傍から、白い花の甘い蜜に吸い寄せられるように。

          忙しなく蜜を集めて飛び回るミツバチが、俺の手の中の花にそっと降りた。

 

          その、綺麗に咲いた心で。

          ハチミツみてェに蕩ける笑顔で。

          誰彼構わず惹きつけちまうは、ミツバチ達が夢中になるクローバーみてェで。

          今も丁度ルフィやチョッパー達と笑いあってるに視線を注ぐと、

          横からナミさんの笑い声がした。

 

          「あら、サンジ君。

           はチョッパーに取られちゃったの?」

          俺は摘んだシロツメクサを束ねながら。

          チョッパーの帽子の中に摘んだクローバーを入れては、

          時々楽しそうに笑い声を上げるに瞳を細める。

          「あァ、この船にが乗ってからもう10ヶ月も経つってのに。

           あいつらは何かってェとって五月蝿ェからな」

          「サンジ君、ちょっとジェラシー?」

          悪戯っぽい瞳で俺を見上げたナミさんに、

          俺は花をゆっくりと編みながら口許を上げた。

          「ええ、そりゃァもう。

           に寄ってくるミツバチは俺が蹴散らさねェとな?

    

           ―――すぐに俺の腕の中に取り返しますよ」

 

          やがて手にしたプレゼントとともに、俺がクローバーのカーペットから立ち上がると。

          ミツバチは名残惜しそうに俺の手の中のシロツメクサから離れた。

 

          「

          チョッパーの帽子をクローバーで一杯にして。

          なおもクローバーを摘んでいたの名前を呼ぶと。

          「サンジ、凄いでしょ?

           3人でこんなに取れたの!」

           は嬉しそうにチョッパーの帽子を俺に見せた。

          「あァ、確かにな。

           クローバーは食用にもなるし、たくさん摘んで帰ると良いかもしれねェが―――」

 

          俺はそっと口角を上げて、の前にかがむと。

          手にしたプレゼントを、の柔らかな髪にそっと載せる。

 

          「クローバーの楽しみ方は。

           それだけじゃ無いんだぜ、プリンセス」

   

          近寄るミツバチ達に、この花は俺だけのものだと見せつけるように。

          俺はシロツメクサのティアラを載せたの頬にそっとキスを落とす。

 

          「わぁ・・・

           凄ェなサンジ! 、本当のお姫様みたいだ!」

          瞳を輝かせるチョッパーとルフィに、俺は紅い頬のを抱き寄せて応えた。

 

          ―――当たり前だ。

               は俺のプリンセスだからな―――

 

          「そうだ、プリンセス。

           この後晩飯の前に街まで買い物に出てみようと想うんだが。

           ご一緒して戴いても?」

          こくんと頷いたの白い手を取って、口付けを落とすと。

          はティアラの花を小さく揺らして、クソ綺麗な笑顔を見せてくれた。

 

 

   

          「ねぇ、サンジはこのおとぎ話読んだことあった?」

          人魚姫にシンデレラ、いばら姫に白雪姫。

          雑貨屋の本棚の前で、懐かしそうにフェアリーテールを開いたを見つめながら。

          俺は思わず手にした瓶を落としちまいそうになった。

          「ん?

           ―――あァ、ガキの頃はよく・・・」

   

          ひたむきな瞳に、甘く薫る笑顔。

          の横顔から思い出したものは。

 

          ガキの頃のひとつの願い。

 

          レディは、フェアリーテールの中のプリンセスに憧れるものらしいが。

          男だってそうなんだぜ?

          いつか、命を賭けて守りてェと想うプリンセスに出会えるように。

          そのプリンセスをどんな事からでも守り抜くだけの強さを手に入れられるように。

          ガキだった頃の俺は、古びたフェアリーテールを読み返しては。

          まだ見ぬプリンセスに、思いを馳せてた。

  

          『またそんな本読んでやがんのか、チビナス』

          『悪ィか、クソジジイ!

           俺は絶対ェオールブルーを見つけて。

           俺のプリンセスに巡り逢うんだ!』

          『てめェの事もロクに出来やしねェガキが何いってやがるんだ。

           ―――チビナス、さっきの客の娘が置いてった土産だ。てめェにやるよ』

          『四葉のクローバー?』

          『あァ。今時珍しい女科学者って客が嬢ちゃんを連れて来てな。

           その嬢ちゃんが、バラティエの飯が上手かった礼にって置いてったもんだ。

 

           ―――なァ、チビナス。

               四葉のクローバーの葉にはひとつひとつ意味があってな。

               誠実、幸運、希望、愛。

               てめェはどれが一番欲しい?』

          『全部だ!』

          『ったくクソがきが―――

           だが珍しく正解だ。

           その4つを全て集めて初めて、『真実の愛』ってのが手に入る―――そんな話を聴いたことがあるぜ』

 

          ―――だからてめェは、もう少しデカくなったら。

               オールブルーを目指して。

               てめェのプリンセスとクローバーを、探しに行きやがれ―――

 

          『何かいったか?クソジジイ』

          『何でもねェ。てめェがもう少し一人前に近くなったら教えてやるよ。

           ほら、さっさと仕事に戻れ!チビナスが』

          『チビナスって呼ぶな!』

 

          ―――そう。

          あの頃の願いは。

          オールブルーを見つける事と。

          愛して守り抜きてェと想うプリンセスに巡り逢う事。

 

          あの時のクローバーはもうとっくに波間に消えちまったが。

          クローバーに掛けたひとつの願いは叶ったんだな。

   

          今の俺には。

          命を賭けて守りてェプリンセスが居るから―――

 

          「―――」

 

          俺は、瞳を離した隙に街のクソ野郎に絡まれてるの名前を呼んで。

          クソ野郎共との間に立ちはだかると、を引き寄せて野郎共を睨みつけた。

          「てめェら―――俺のプリンセスに何してくれてんだ?」

          「優男は引っ込んでな!」

          そう言って殴りかかってきた男の攻撃をかわして、軽く蹴りを食らわせると。

          口ほどにも無ェ野郎は地面に叩きつけられたまま伸びちまった。

 

          「には指一本、触れさせねェよ」

 

          蜘蛛の子を散らしたように逃げていく野郎をきょとんとした表情のまま見つめるに。

          俺は呆れ顔を作って、華奢な肩を抱き締める。

          「甘い蜜につられて、ミツバチはどこからでも飛んできちまうんだから。

           気をつけてくれよ?

   

           ―――もっとも、俺が守るけどな?―――

 

          耳元に届けた俺の言葉に。

          は柔らかな頬を染めて頷いた。

          「ありがと、サンジ。

           ―――ねぇ、さっき一杯ビン詰め買ってたけど。

           何を買ってたの?」

          「それは夜のお楽しみだぜ?

           ―――さァ、もうミツバチが寄って来ねェように。

                お手をどうぞ?プリンセス」

          差し出した俺の腕に、しなやかな細い腕がそっと絡んで。

          鮮やかな笑顔をくれたの頭には、フェアリーテールに出てくるプリンセスのティアラが見えたような気がした。

 

 

 

          真夜中近くのキッチンで、紫煙を燻らせながら。

          俺は上機嫌で、冷凍庫からプリンセスの為だけのスイーツを取り出す。

 

          すりおろしたレモンピールがたっぷりのレモンソルベ。

          グラスに盛ると、甘い香りがキッチンを吹き抜けていく。

          そう、この甘い香りは。

          ソルベに混ぜた、昼間買ったクローバーのハチミツ。

          味見するとレモンの爽やかさとクローバーのハチミツの上品な甘さがの唇を思い起こさせて。

          俺は急かされるように、ソルベにスプーンでハチミツを滑らせると。

          プリンセスの待つベッドルームへと、トレイを片手に駆け出した。

 

          「、俺のプリンセス限定のスペシャルスイーツだ」

          ベッドサイドにトレイを置いて、ベッドに座ったをそっと掴まえると。

          は俺の瞳の前に、小せェものを差し出した。

          「サンジ、これあげる」

   

          俺の手に舞い降りたものは、四葉のクローバー。 

          驚いた俺には嬉しそうに笑って、言葉を続けた。

   

          「今日クローバーを摘んでる時に見つけたの。

           このクローバーは、前にサンジがくれたお花と同じプリザーブドフラワーにしたから」

 

           プリザーブドフラワー。

           花の樹液を全て脱水して。

           かわりに有機保存液を浸透させて乾燥させて作る枯れねェ花の事らしいんだが。

           飯の後が忙しそうに作ってたもんは、『枯れねェクローバー』だったのか―――

 

    

          「それからこれも、ね?」

          の手には、俺が作ったシロツメクサのティアラ。

          昼間に摘んだ時から色褪せねェその清らかさは、俺の瞳に映るプリンセスにぴったりで。

          気が付けば俺は夢中でを抱き締めて―――

 

          そして、クローバーの新しい想い出に気づいた。

   

          『今時珍しい女科学者って客が嬢ちゃんを連れて来てな。

          その嬢ちゃんが、バラティエの飯が上手かった礼にって置いてったもんだ』

          もしかして、クソジジイが持ってきたこのクローバーをくれたのは―――

 

          「なァ、

          小せェ頃に、四葉のクローバーを持ってバラティエに来たことはなかったかい?」

   

          応えの代わりに、はひとつ笑顔をくれた。

 

          ―――四葉のクローバーの葉にはひとつひとつ意味があって。

               誠実、幸運、希望、愛。

               そしてその4つを全て集めて初めて、『真実の愛』が手に入る―――

 

          オールブルーを見つける夢を、叶える希望を胸に。

          自分の野望に誠実に生きてる仲間と幸運にも出会い、航海に出た。

          そして、愛すべきプリンセスを見つけて。

 

          今、この手の中のクローバーに託す願いはひとつ。

   

          俺はシロツメクサのティアラをの頭に乗せて。

          クローバーのハチミツが煌くレモンソルベを一口掬うと。

          口付けでソルベをに届けた。

   

          「いつまでもこの腕の中に。

             ―――俺の、プリンセス」

 

          俺の願いに応えるように。

          手の中の四葉のクローバーが、カーテンを揺らす風にそっと頷いた。

 

 

                          written by ラム

                          2004.6.1

 

 

                                            

                                        リクエストではしょっちゅう書いてたので気づきませんでしたが。
                                        実に3ヶ月ぶりのサンジ本編ドリームup・・・!
                                        テニプリのプリンス参戦につき、しばらくご無沙汰してしまいました。
                                        サンジスキーのレディ、クソお待たせしてしまって申し訳ありませんでした!
                                        今回も相変わらず長くて解り辛いかもしれませんが・・・
                                        「Swallowtail Butterfly」「Preserved Flower」をお読みいただくと、少しは読みやすくなるかと・・・
                                        40000hits記念につきDLFですv
                                        ええ、4万hitsだから4葉のクローバー(笑)
                                        単純でスミマセン。
                                        こんなヘタレドリームでよろしければお持ち帰りくださいませv


                                        
ということで、持ち帰りましたv
                                        期待を裏切らない、素敵なドリームにメロリンvvv です。
                                        サンジスキーでよかったな、と思う事っていくつかありますが、そのうちの一つが、
                                        ラムちゃんのサンジ夢の新作が読めた時です。やっぱり素敵だなあ……(感嘆)
                                        そんな素敵なサンジさんの40000hit記念は四葉のクローバー。
                                        4枚の葉それぞれの意味・誠実、幸運、希望、愛。それら全てを集め五つ目・真実の愛
                                        を日々深めつつあるラムサンジさんに、これからも幸多からんことを。
                                        ラムちゃんの素敵サイト「Honey Laboratory」へは、リンク集からどうぞ。
                                        40000hit分、この素敵なサンジさんに愛されてみてください。
                                        ご本人あとがき中の「Swallowtail Butterfly」「Preserved Fiower」も読めますよv
                                        尚、この小説は別窓で出ています、お戻りはブラウザを閉じてください。