海賊王。
大剣豪。
世界地図。
勇敢なる海の戦士。
万能薬。
真・歴史の本文。
……オールブルー。
………じゃあ、私は……?
<raison d’etre>
ゴーイングメリー号の見張り台。
せいぜい2人くらいしかいられない、この小さな空間が今のには妙に落ち着く。
時刻は真夜中。
次の島にたどり着く前の航海中に夕暮れを、夜を迎えたので今は、この場所に
錨を下ろして停泊中だ。
屋根の無いこの場所からは、夜の海も夜の空も遠くまで見渡せた。
「………」
静か、だな……
風もほとんどなく、穏やかな水面が何処までも広がる、夜の海。
音も無く瞬く無数の星をちりばめた、夜の空。
その中に浮かぶ月だけが、夜の海に一筋の輝く道を引いて―――
昼間の喧騒が嘘のように静まり返った空間。
誰も居ない甲板、何処までも続く夜の海と夜の空―――。
そこに、ただ一人。空を見上げ、海を眺めて。
「ーーー………っ」
知らず知らずのうちに、の口からため息が零れた。
確かにここでこうしていると、落ち着くには落ち着く。けれども―――
そのの顔は果たして、落ち着くといったよりはむしろ。
「ため息一つで、幸せ一つ。逃げていくそうですよ、マドモアゼル」
何度目かのため息、それと同時に聞こえた声。
振り向くとそこには、
「サンジ……」
「もっとも、貴女の幸せは俺が逃がさねェけどな」
見張り台に降り立ち、の隣に腰を下ろしたサンジが彼女の方を
向いてそう言った。
そのサンジの、いつもの様子にくすり、とは小さく笑う。
……笑っただけ、だった。
「……」
笑顔の後だからだろうか。小さく笑った笑みが消えて、元の表情に戻った
だけだろうの顔は何だか、ひどく寂しげに見えた。
「どした?」
そんなを、サンジがそっと抱き寄せる。
「ん… 何でも」
「ない、はナシだぜ、プリンセス?」
が続けようとした先の言葉を、サンジが遮った。
「言いたくなきゃ言わなくてもいいんだけど、よ…… 一人で夜、こんなトコにいたら
冷えるだろ。現にホラ、こんなに冷たくなっちまってる」
確かに、抱き寄せてくれたサンジの腕は、体温は温かくて心地よくて。
はそっと、抱き寄せられた体勢から向きを変えると、満天の星空を見上げた。
そうしながら、その身体を彼に預ける。
「……ねぇ、サンジ」
この体勢なら、サンジと顔を合わせなくてすむ。
今、どういう顔をしているのか…… 見られたくなかった、見せたくなかったから。
「海賊王、大剣豪、世界地図、勇敢なる海の戦士、万能薬、真・歴史の本文。
この船の人たちは、みんなそれぞれ、大きな夢を、目標を持ってるわ。
もちろんサンジ、貴方だって。貴方だって、オールブルーという夢がある」
それは、この星空の星達のように。
キラキラと輝いて、でも、その光で他のモノを侵すことのない、自分自身の確固たる
モノ。
「オールブルー、その海の話をするときの貴方に、惹かれた。もちろん、貴方が
素敵なのはそれだけじゃない、他にもたくさん、挙げればキリが無いくらいだけど。
その中でもオールブルーを見つける、っていうその貴方の夢に対する信念が、
その想いが、眩しかった。その夢を貴方が叶える時を、見届けたいって思った
くらいに」
「……」
「………それに引き換え、私には何も無い」
こんなにキラキラした、輝くモノ。この船…… ゴーイングメリー号・麦わら一味の
皆が持つような、確固たる夢。
「私にあるのは、サンジ、ただ貴方の傍にいたいだけ。その想いだけで、ここまで
来てしまったんだけど…… そんなのでいいのかな、って」
「……」
「他に何かとりえがあるわけでもなし、大した夢があるわけでもなし、ただ貴方が
好きで貴方の傍にいたいだけでこれからこの先、この船に乗ってて……
貴方の傍に、居続けてもいいのかな、って……」
「あァ。いいんじゃねェかな?」
さらり、と。
今まで、黙っての話を聞いていたサンジは、さらりとそう言った。
そう言って、後ろからを抱きしめる腕をきゅっ、と強くする。
「いいんじゃねェかな。ていうか、それは理由にならねェのかい?」
「……」
「俺の傍にいたい。俺がオールブルーを見つけるその時を見届ける。
それは、がこの船に乗っている理由に、なりえねェのかい?」
「……」
語りかけるように、ゆっくりと。
の耳元で、彼女と同じ星空を見上げながら、サンジがそう言った。
「他にも、何かみんなの役に立ちたいってんなら、コック見習いってのはどう?」
くるり、と。
腕の拘束を解いたサンジが、をくるり、とこちらに向かせると言った。
「一人前になれるように、みっちり仕込んであげるよ。そうすりゃ俺も助かるし、
みんなも喜ぶし、何よりは俺の傍にいなきゃなんない。そうなりゃ何より
俺が嬉しい」
思いついた名案。
そうとでも言いたげに、にっ、と笑って弾む声で、サンジがそう言った。
「。この船での存在理由が欲しいなら、そんなの俺がいくらでもなってやる。
だからもう、そんなカオやめようぜ、プリンセス」
あの体勢からこちらを向かされたから。
は、サンジを見下ろす体勢になっていた。
「……」
……まいったなァ、私どんなカオしてたのかしら。
そう思いながら、はサンジの肩にぽすっ、と頭を預けるように伏せた。
“あァ。いいんじゃねェかな?”
“いいんじゃねェかな。ていうか、それは理由にならねェのかい?”
“他にも、何かみんなの役に立ちたいってんなら、コック見習いってのはどう?”
先程、を見つめて語られたサンジの言葉。
それらはすうっと、まるで溶けるようにの中に優しくしみ込んでいった。
“俺の傍にいたい。俺がオールブルーを見つけるその時を見届ける。
それは、がこの船に乗っている理由に、なりえねェのかい?”
「……そうね。それは立派な理由だわ」
がそう呟いて、顔をあげた。
「元々私には、この気持ちしかないもの。サンジ、貴方が好きっていう、
この気持ちしか。この気持ちでこの船に乗ることにしたの、忘れるところだった」
顔をあげたは、明るい声でそう言った。
その顔はもう、晴れ晴れとしていて迷いはない。
「そうと決まったら、もう寝なきゃね。明日は早いんでしょう?」
そう言ってはサンジの上から退いて、立ち上がろうとする。
しかし……
「そ。もう寝なきゃな、v」
サンジはそう言うと、ぎゅっ、とを抱きしめてそのまま、見張り台の上で
寝ようとするから……
「えっ、ちょっ、サンジ!?」
「なーんてな、冗談」
ぱっ、とサンジがを放して、笑った。
「明日、遅れんなよ」
そう言うサンジは未だ、座ったままで。
ったくもう、と顔を真っ赤にしながら見張り台から降りようとしたは、あ、と。
「サンジ」
戻ってきた彼女は、サンジに呼びかけるとその目線の高さまでしゃがみ込んで。
「ありがと。明日からまた、よろしくね」
そう言って、ちっ、と。
触れるか触れないか、のキスを彼に贈った。
「サンジ、大好き」
そう言って、は見張り台を降りていった。
海賊王。
大剣豪。
世界地図。
勇敢なる海の戦士。
万能薬。
真・歴史の本文。
オールブルー。
……そして、オールブルーを彼が見つけるその時を、見届ける。
それが麦わら一味8人の、確固たる夢。
<fin.>
6000HITキリリク「サンジ相手で甘々。サンジに自分では似合わないのでは
ないかと悩んでしまうヒロイン」夢月ゆいな様へ。お待たせしました!
……ってどんだけ待たせてんだよ、って感じですが。
待たせすぎで、もしかしたらゆいな様、もうE..T.R.には来て下さってないかも
しれません…… そのくらい前です。 引越前、というか私のPCが突然死迎える
前にもらったキリリクだったから…….
本当、お待たせして申し訳ありませんでした!
リク内容に叶ってますかね……?
今回の舞台、葉月の中ではどうしてもゴーイングメリー号の見張り台しか浮かび
ませんでした。という話をココに書いたんですが、どうにもこうにも長くなったんで
ブログに移しました。
ではでは! キリ番HIT・リクエストありがとうございました、ゆいな様!
そして、まァこれは勝手に私がやってしまったんですが、今一度ゴーイングメリー号
書く機会を与えてくださってありがとうございました。
※ただ今キリリクは停止中です。申し訳ありません※
※なるべく早く再開できるよう、努力します※
※壁紙素材は“Pearl Box”様からお借りしたものです。※
※ここから持ち帰らないよう、お願いします※
※ご入用の際にはリンクページの“お世話になった素材サイト様”よりリンク※
※してますのでそちらから“Pearl Box”様に飛んでください※