朝、眠りから覚めて目を開けたら一番に。
見ることの出来る、幸せ。
<Dear;My dear>
―――ん…
朝、目が覚めるとき。
変な話だけれどこの時が、にとって一日のうち、一番寂しさを感じる時間だった。
夜、あんなに愛して、愛されて。一緒に眠りに付く彼は、この船の食を一手に担う料理人だから。
朝は、クルー全員の朝食の準備で此処にはいない。
彼がいた場所は、消え入りそうな僅かな温もりだけを残して。
手で探ってみても、シーツの海を泳ぐだけ。
隣に空いた、一人分のスペース。
まあ、寂しいなんて言っても。同じ船内にいるわけだし、いる所もわかっているから。
すぐに起きて身支度整えて、ラウンジへの扉を開ければ―――
“おはよう、”
朝日を受けて輝く蜂蜜色の髪を揺らして此方を振り返り、今、この船を照らしている太陽にも負けないくらいの
眩しい笑顔で迎えてくれる彼。
“おはよう、サンジ”
その笑顔を見た途端、起き抜けに感じた寂しさは跡形もなく消え。
自然とこっちも、笑顔になるのを感じるだった。
―――今日も一日、張り切っていきましょう。おっと、船上の生活なんてたかが知れてる、なんて言わないで。
そう言い切れる程、退屈なんてしやしないわ、この船・ゴーイングメリー号では…… ―――
“お目覚めの一杯、今日はサンジ特製スパイスミルクティーを。昨夜から何だか冷え込むから、温まるようにね”
少し砂糖で甘味つけたら、より好みになって飲みやすくなるよ、と。
シュガーポットと共に置いたサンジが、去り際にこめかみにちゅ、とキスをくれた。
おはよう、のキスだそうで。
以前、聞いたらそう言って笑っていた。
ラウンジの自分の席で、スパイスミルクティーを飲みながら。
朝食作りの続きに、キッチンスペースに戻ったサンジの背中を眺めつつ。
―――確かに冷える、昨夜と今朝。昨夜は、そんな冷え込みも忘れるほど、貴方が直に温めてくれたけど……っ、
今朝は、そのかわりのこのお茶を。もうすぐ美味しい朝ご飯、その前に。
そうよ、私の恋人は彼なのよ? 退屈なんてしやしない。どう取り繕っても自分自身に嘘はつけない、
だからあえて言うわ、一見退屈そうに見えても私の瞳は、心は…… サンジ、貴方に向いている。
貴方を想うので、忙しいの。貴方としたいこと、感じたいことがこれからもあるの。
サンジ、貴方と……… ―――
スパイスミルクティーには、お砂糖二つ。
甘い方が好き、なのはもちろん、お茶だけの話ではない。
―――今日も一日、張り切っていきましょう。おっと、船上の生活なんてたかが知れてる、なんて言わないで。
そう言い切れる程、退屈なんてしやしないわ、この船・ゴーイングメリー号では……
朝一番の貴方の笑顔は、そうやって過ごす私の一日のパワーの源になるの…… ―――
「ん……」
今日も朝になって。
目を開けたら、一人きりの部屋。……イヤイヤ。
早くラウンジに行って、サンジに会おう。
そうして、いつもの通りの朝を過ごすんだ……
そう思って、目を開けたそこには。
「おはよう、」
「………」
「ん、どした? まだ眠いかい??」
「……… おはよう」
やっとのことで、出た言葉。
そう、いつもはラウンジに行かなきゃ、いないのに。
そ、と触れてくれた掌が、夢でも幻でもないことをに、伝えてくれる。
「え、サンジ… どうして? 今は航海中で、メリーの中なのに… ホテルの部屋とかじゃないのに……」
少し、ぽかんとしたような顔では、目の前のサンジの顔を見る。
「Happy Birthday、」
ベッドの中、身じろいでサンジがを抱き寄せる。
「これはナミさん提案、俺を除く他六人からの、への誕生日プレゼント、だってさ。
今朝のメシは昨夜のうちに、もう温めて配膳するだけにしてあるから、ナミさんとロビンちゃんがやってくれるって。
だから俺は、今朝くらいはに、一瞬たりとも寂しい思いをさせないで傍にいろ、って。もちろん俺としては
朝だけじゃねェ、一日中のつもりだけどな」
そういえば男部屋・女部屋から独立したこの部屋を、お幸せに・お二人さん、と皆から貰って少し経った頃。
朝、目覚めたその時だけ、一瞬寂しいこの思いのことを、雑談中にナミに言った事があったのをは
思い出した。
“なーにノロけてんのよ”
その時はそう言われて小突かれて、“ふふっ、バレた?”なんて返したけれど……
「……うわー……」
「?」
呼ばれて、上げたの顔は。
「どうしよう…… 私、今ものすごく嬉しい。幸せかも…… ううん、幸せ」
上げて、サンジの方を向いたその顔は、幸せそうに崩れていて。
「そっか。実は俺も」
の髪を撫でながら、サンジの顔も。
「いつもいつも、キッチンで朝飯の支度しながら… 今か今かとを待ってるのもいいけれど。
今朝は朝、起きたところから貴女を独り占めできる。
いつもは貴女が目覚めるところなんて、この船じゃそうそう、お目にかかれなかったからな。
それどころか、この笑顔。の誕生日なのに、俺の方がプレゼント貰ったみてェだ」
同じように、微笑っていた。
「後で皆に、お礼言わないとね。素敵な朝をありがとう、って」
「ああ。でも今は」
髪を撫でていたサンジの手が、の頬に添えられて。
そっと乗り出してきたサンジに、彼女は目を閉じた。
“朝、一番に目を開けたときに。好きな人を…… サンジを真っ先に見られるって、何て幸せなんだろう、って
思っちゃった”
“それはそれは。でも、今日一日はもっともっと、そういう風に感じてもらわねェとな。もちろん、俺のプレゼントは
こんなモンじゃねェ、ちゃんと別にあるし、今日のランチもディナーも、期待してくれてかまわねェぜ?”
繰り返されるキスの合間に、そんなことを囁いた、今朝。
素敵な一日が始まりそうな、予感。
<fin.>
お誕生日おめでとう、シャオにゃ!
というわけで、このお話は「キミノトナリ。」クミィ様・「花の囁き 詩の調べ」ハル様主催企画
『黒猫聖誕祭』に出品したサンジ夢です。それをこちら、自サイトでもUP。
我らが愛しき黒猫…… 「バニラの花の砂糖漬け」シャオ様。
私が夢小説読み書き続けていられる理由の一つには、数々の素敵な書き手さんや
彼女達の描く超・素敵なサンジ達との出逢いがあるからですが…… その中でも、
とりわけシャオにゃとシャオサンジとの出逢いは大きいです。
いつも胸に染み入る切なさに泣いて、それでも愛して、愛されて。
また時にはサイト名同様、甘い甘い時間を過ごして。
本当に大好きです。愛しいですよ。これからもどうぞよろしく、と思い書かせていただきました。
お誘いくださったクミィ様、素晴しい機会をありがとうございました。
葉月は、クミィサンジも大好きです。もちろんクミィちゃんも、ね。
そしてお読みくださった貴女にも、感謝を込めて。 葉月夕子 拝。